Jordanian

　若い頃、高校の非常勤講師をやっていたことがある。もちろん英語ではない。大学の時に教職を取っておらず教員免許を持たないので、臨時免許という制度でもって非常勤講師を務めた（自分の周囲・専攻分野ではよくあるケースだった）。

　出勤して非常勤講師控室に行けば、授業を終えて控室に戻れば、そこには同世代の英語の先生（非常勤）しかいない。正規の教員免許を持っているのだけど、なかなか正規教員のクチがなくて、非常勤講師で稼いでる人だった。

　あるとき生徒が英字新聞の記事を持って、その英語の先生に質問しに来た。内容はパレスチナ難民だったと思うが、その先生 Jordanian という単語がわからなかった。先生はクチを濁してた。

　私は横で話を聞いててヨルダン人のことだとは思っていたけど、英語の先生のメンツをツブす訳にもいかず。

　生徒が控室を出て行った後で私は先生に言った。「Jordanian ってヨルダン人のことですよ」。

　そしたら先生ったら血相変えて控室を飛び出してった。学生を捕まえて教えようということだったのだろう。

　時は過ぎ、今や自分は大学の正規教員。高校の教員というのは万事そうしたものだろうと思っている。

　もっともこの話は自戒も含む。自分もいいかげんトシだし、学生の方がより新しい知識を持っていることの方が多く、自分が教えている内容はカビが生えかけなのだ、能力の限り内容を更新しなければと自らを戒めている。