ŋの英単語帳

英単語

経緯

 成り行きで、自分が所属する学部の  TOEIC  受験推進の仕事を請け負ったのが…何年前だったっけ?10年以上前だったと思う。

 学生のスコアを分析したら、ボキャブラリが弱く、そのせいで長文がダメという傾向が見られた。それをどうしたものか。

 

  それでいろいろ TOEIC 向けの単語集を買ってみたのだが、ほぼすべて大学英語教育学会が編纂した、大学の英語教育で教えるボキャブラリの指針『JACET8000』をベースとしたものだった。

 

https://www.amazon.co.jp/dp/434278873X/

 

 

JACET8000英単語 「大学英語教育学会基本語リスト」に基づく

JACET8000英単語 「大学英語教育学会基本語リスト」に基づく

 

 

 めくってイヤな感じがした。冒頭に、イギリスのコーパス (corpus) がベースと書かれている。

  「コーパス」が何であるかは、はてなキーワードに載ってるから、クリックしてご覧あれ。ともあれイギリスのコーパスがベースであれば、中身もイギリスっぽくなるに決まっている。

 

 ざっくり見たけど、ひどくイギリス英語偏重。ランクは低い方だけど exchequer なんて単語が載ってる。こんな単語、イギリス財政史を専攻する大学院の博士課程の学生でなきゃ目にしないだろう。

  workhouse なんて単語もあった。これ福祉系の大学や学部の場合、福祉の歴史の教科書にカタカナで「ワークハウス」と出てくる。英単語としては Charles Dickens(ディケンズ)を原文で読むような文学部イギリス文学専攻の学生しか目にしないだろう… Oliver Twist(オリバー・ツイスト)に出てくるんだけど。

 

 そんなこんなで、んまぁ「使えん」というのが率直な感想だった。

 それから年月が過ぎ、新しく『新JACET8000』が公表された。

 

https://www.amazon.co.jp/dp/4342000482/

 

大学英語教育学会基本語リスト 新JACET8000

大学英語教育学会基本語リスト 新JACET8000

 

 

 買ってざっくりながめてみた。イギリス英語偏重は直ってたけど、逆にややアメリカ英語寄りのように見えた。

 

 新JACET8000にはCD-ROMで「中学高校コミュニケーション支援語彙リスト」というオマケが付いている。中学・高校で教えた方が良い3,000語とのこと。

 見たら、なんつーか…英語の先生の「志の高さ」には敬意を表するけれども、実際問題として、中学英語とされる単語の中には、これ高校だろ?ってのがあるし、高校英語とされる単語の中に、これ中学だろ?あるいは、これ大学・大学院だろ?ってのもあったりして。

 

  たとえば criterion なんて単語がある。本編では#4019で、中高の中で最もランクは低かったけど…

 

 私は大学院修士1年の外書講読でこの単語に出くわして、それは「会計基準」という意味だった。人文科学系は知らん。社会科学系の場合、英文会計なんて授業には出てくるだろう。けれどもそんな授業があって、それを履修する学生がいるって大学は、よっぽどレベルが高い。偏差値50の大学の教員である私としては、わざわざ学生に教えるほどの単語とは思えない。

   自然科学系だと学部・専攻によっては統計学AIC ってのを習う。これは「赤池情報量基準」で、フルのスペルは Akaike Information Criterion なんだけど、普通は AIC = -2 ln L +2k とかいう式を習うものであって、criterion という単語そのものを学ぶことにはならないと思う。これが卒業研究となれば英語の論文を読まされるだろうし、大学院になれば英語で論文を書くこともあるだろうし、その段階でようやく criterion という単語を覚えることになると思う。

 

 何にせよ criterion なんて単語はどんなに早くても大学の学部、普通は大学院で目にする単語であり、高校の段階で覚えるほどの単語ではないと思う。よく分からない。

  

 要するに、旧版よりは使えるけれども、使うにしたって取捨選択しなければ学生だって、きっとつまんないと思う。

 

 このブログでは、新JACET8000をわたくし独自のやり方でランキングして、イギリスとアメリカのオンライン辞書を横目に見ながら取捨選択して、その結果の上位3,000語を取り上げようと思う。